今回は『春ゆきてレトロチカ』のレビューになります。
今作は”ネタバレ厳禁”でスクショが出来ないため、ほぼ文章のみのレビュー記事になりますが、なるべくわかりやすいかたちで感想を述べていければと思います。
実写かつ動画の推理アドベンチャー
「春ゆきてレトロチカ」の最大の特長は、
実写かつ動画である
ことです。
意外な事に、この手のゲームはほとんどリリースされていません。
恐らく、最初にリリースされたのは「デスカムトゥルー」でしょう。
本郷奏多さんと栗山千明さんをメインキャストとして起用した”タイムリープサスペンス”です。
「春ゆきてレトロチカ」は100年にわたって繰り広げられた4つの殺人事件を解明する”推理アドベンチャー“。
ディレクターにはあの「428〜封鎖された渋谷で〜」を手掛けた伊東幸一郎氏が携わっています。
他にも、「全裸監督」で知られるたちばなやすひと氏が撮影プロデューサーとシナリオディレクターを務め、「あなたの番です」などを担当した林ゆうき氏が音楽を担当するなど、そうそうたるメンバーが集結した作品になっています。
- 実写を使ったリアルな世界観
- 演者さんたちによる迫真の演技
- 止まらなくなるほど引き込まれる物語
ネタバレが出来ないので抽象的な表現しか出来ませんが、想像以上に高い完成度に驚きました。
では、今作のキモとなるゲームシステムについて簡単に説明しましょう。
“手がかり”から”仮説”を立て”推理”するシステム
この手のアドベンチャーゲームは、「選んだ選択肢によって物語が変わる」というのが定番ではあります。
しかし、『春ゆきてレトロチカ』は推理アドベンチャーなので、犯人を特定する事が重要になってくる訳です。
その方法が非常に独特で特徴的です。
問題編
最初は事件に至るまでの登場人物とのつながりや、事件前後の状況を「選択肢を選択しながら」進めていきます。
選択肢によって物語に若干の変化が起こりつつ、この間に集めた多くの”手掛かり“が次のフェーズで活きてきます。
推理編
推理編では、問題編で集めた”手掛かり”をもとに、犯人の予想や犯行方法の推測、動機など、様々な”仮説“を立てていきます。
これがパズル的なシステムで進み、”仮説”を裏付けていく「思考」の役割を担います。
疑問に対し思考がまとまったら、それが”仮説”として浮かび上がります。
例えば「凶器は◯◯だ」などです。
ただし、あくまで仮説なので、それが正しいとは限りません。
あくまで”可能性の一つ”に過ぎないのです。
この仮説が、次のフェーズで重要になります。
解決編
さあ、次はいよいよ犯人との対峙です。
あらゆる状況から犯人を特定し、犯行方法や動機を暴いていきます。
ここで、推理編で導き出した”仮説”が活躍する訳です。
推理編で導き出した”仮説”は、犯人に突き付ける「選択肢」となって登場します。
仮説が多ければ多いほど、犯人に突き付ける選択肢は多くなりますが、逆に判断つかない状況になることもあります。
なので、推理編で出た仮説がちゃんと犯人や犯行動機に行き着くかを吟味しておきましょう。
とはいえ、解決編で失敗しても、推理編で積み重ねた仮説を見直せる優しさもあります。
このように、問題編から推理編、推理編から解決編に至って、一つの事件が完結します。
渋いストーリーとマルチロールシステムがGOOD
上記で説明したようにシステム回りはまさにゲームなんですが、とにかくストーリーが秀逸!
四十間(しじま)家を舞台した100年にわたる歴史の謎に挑むストーリーはとにかく惹き込まれます。
とはいえ、派手なストーリー展開なのかと言えばそうではなく、細かいピースを繋ぎ合わせた時にあらわになる盛り上がりを楽しむような”王道のサスペンス”です。
「渋い」と言った方がいいのかもしれません。
あと、演者さんによる「マルチロールシステム」も良いです。
「マルチロールシステム」とは演者さんが複数の役を演じるシステムで、事件ごとに演じる役が全く違うのです。
ある事件では犯人だった人が、(時を越えた)別の事件では被害者になる場合もあります。
そのためか、事件を解決していくと「この人が今回も怪しそうだ」と”先入観が邪魔をしてくる”んですよ。
時を超えた事件なので関係ないはずなのに…。
こういう自分の思考の葛藤すらも楽しめてしまうのが非常に楽しいです。
それぞれの事件によって役柄を変える演者さんの名演もステキですよ!
なぜ評価が真っ二つに割れたのか?
この『春ゆきてレトロチカ』というゲームですが、SNS上では評価が真っ二つに割れています。
なぜ評価が割れたのでしょうか?
おそらく、UI・操作性の悪さに引っ張られてゲームのテンポを削がれてしまうことにストレスをどれだけ感じたかが評価を分けた原因だったのではと感じました。
ただ、この手の実写かつ動画のゲームというのは、まだ黎明期にあたります。
実写だけに、役者さんの時間を押さえたり、特定の場所で限られた時間で撮影をしたり、道具を揃えたり、そしてリリース予定日に間に合わせるというかなりハードな制作過程を背負う作品なのかも知れません。
たしかに粗はあります。
しかし、今作はそれをしのぐほど秀逸な物語と役者の方々の名演が光る作品だったと私は感じました。
総評
正直『春ゆきてレトロチカ』をプレイする前は「期待半分、不安半分」という気持ちでした。
というのも、同様の実写動画ゲーム『デスカムトゥルー』が思ったよりも…だったからです。
おそらくその経験があったからか、『春ゆきてレトロチカ』は想像以上に出来が良い作品だと感じたんですよね。
個人的にこの手のゲームはもっと増えて欲しいと思っています。
実写動画ゲームのジャンルて可能性を感じるんですよね。
今までにない新しいゲーム体験が出来ると思うんです。
難しいと思うけど、出来れば『428~封鎖された渋谷で~』をリメイクしてほしい。
話が逸れましたが『春ゆきてレトロチカ』は、是非多くの人に体験して欲しいゲームだと思います。
ゲームの新しい可能性を垣間見ることができますよ。
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