今回は『HUMANITY』のレビューになります。
『HUMANITY』は、『Rez Infinite』や『テトリスエフェクト・コネクテッド』を手掛けた水口哲也氏と、映像ディレクターの中村勇吾氏が手掛けた作品で、ゲームもさることながら、その世界観も非常に素晴らしい作品です。
人類を先導する柴犬となって人々を光の柱へ導け!
ある朝、目が覚めると、私は犬だった
このフレーズとともに突如始まる”人類先導ゲーム”は、インパクト抜群で一気に引き込まれます。
無機質な空間(ステージ)から、意思もなく行進する人々。
主人公は、なぜ自分が柴犬になったのかも分からない。
そんな中、頭の中から「人々を先導し”光の柱”へ連れて行ってくれ」という謎の声が聞こえる。
唐突であるがゆえにすべてを理解することは出来ませんが、人々を導くという使命を帯びていることだけは何となく分かります。
向かう先には何があり、どんな結末が待ち構えているのか?
このように、導入から人を惹きつける要素満載の『HUMANITY』。
基本的にパズルアクションゲームというのは、ストーリーではなくパズル(構造)に重きが置かれて作られているので、ここまでストーリーがしっかりしているゲームはとても稀なゲームだと思います。
主なゲームシステム
それでは『HUMANITY』のゲームシステムを紹介していきましょう。
このゲームは「ゲートから出てくる人々を光の柱へ導くこと」がクリアへの基本的なルールとなります。
尚、ゲートから出てくる人々は、直進しか出来ません。
対象的に、プレイヤーである柴犬は自由に動くことができ、ジャンプも可能です。
最初は、人々の進行方向を変えることができる『↑』や、ジャンプさせることが出来る『・』などを巧みに設置し、人々を光の柱へと導きます。
上手く誘導出来ずに人々が落下したり、物体に潰されたりしても大丈夫。
ゲートからは無制限に人々が出て来ますのでご安心下さい(ゲーム上では、魂が循環して戻るという設定になってます)。
ゲームが進むと、限られた人々しかいない場合もありますが、そういったステージは非常に少ないです。
個人的に、このゲームシステムが非常に秀逸だと思ってます。
『テトリス』や『IQ』のように、物量に押し込まれるような切迫した状態はなく、タイムアップも存在しません。
じっくりと考えたい人は熟考出来るし、サッサとクリアしたい人はトライ&エラーが容易に出来き、ゲームオーバーもありません。
さらに驚きなのは、「HINT」を見るとクリアの方法が動画で出てくるというパズルゲームでは考えなれない要素まであるということ。
パズルゲームの間口が限りなく広く、失敗することに対し非常に寛容なんですよね。
それでいて、ストーリー性も兼ね備えてるという…。
いや、マジでめちゃめちゃ考えて造られたゲームですよ!
無機質なのに綺麗と感じる程洗練された世界観
この『HUMANITY』というゲームについてもう少し伝えたいことがあります。
それは「世界観」です。
基本的にパズルゲームはほぼ全てシンプルで無機質なものが多いですよね。
思考を繰り返すパズルゲームは、派手な要素は邪魔になりがちですからね。
もちろん、『HUMANITY』もそのひとつに入ると思います。
…入るんですが、不思議なことにそこに「美しさ」を感じるんですよ。
なんだろう、「無駄を削ぎ落とした」ではなく、ひとつひとつのステージが非常に洗練されているように感じるんです。
特に、ハブとなる拠点のようなエリアはホントにキレイ。
圧倒的な物量?の人々が、あるていど規則性をもって動く(漂っている)様子に見入ってしまいます。
そして、欠かせないのがBGM。
『HUMANITY』のBGMは本当に良いです。
非常にシンプルな電子音に聞こえるんですが、それが『HUMANITY』の世界観とメチャクチャマッチしてるんですよね。
いわゆる”主張しない音楽”ではあるんですが、その世界を構成するためにかかせない要素であることを感覚的に理解してしまいます。
圧倒的なステージボリューム
では、気になる『HUMANITY』のボリュームですか、個人的にはかなりのボリュームがあるゲームだと感じました。
用意されているステージ数は、なんと90ステージ以上!
しかも、パズルゲームには珍しい「ボス戦」まであります。
「パズルゲームにボス戦てどういうこと?」と思うでしょうが、これは実際にプレイすると「なるほど、これは必要な要素だな」と実感すると思いますよ。
さらに、このゲーム全体の構成が”前半”と”後半”に分かれており、前半がパズルゲームで、後半はタワーディフェンス的な要素に分かれています。
前半は、知恵の輪を解く様な感覚で・・・。
後半は、守りながら攻める感覚で・・・。
同じゲームなのに全く違う感覚すら覚えます。
パズル好きなら必ず手を出したくなるクリエイトモード
『HUMANITY』の遊び方は「用意されたステージをクリアする」だけにとどまりません。
クリエイトモードによって、自分でステージを作ることが可能です。
こういった自作ステージが作れるモードというのは、基本的に
ステージの作り方を理解するのが非常に難しい
というのが定番です。
やれることが多い分、ギミックをどの様に配置し、どういった状態になったらどういうアクションが起こるのかを繋げるのが難しかったりするんですよ。
昔、私は「トライアルズフュージョン」というレースゲームでオリジナルコースを作ったりしてましたが、とにかく難しく、作成までに1ヶ月かかったりすることもありました。
『HUMANITY』もそういった感じなのかなと思っていたんですが、全く違いました。
メチャクチャ簡単にステージが作れます。
チュートリアルが細かいだけでなく、分かりやすいので頭にスッと入っていきます。
それでいて、結構複雑なことも出来るので、凝りだすと止まらなくなるほど没頭してしまいます。
また、出来上がったステージは「投稿」することで他のプレイヤーが遊ぶ事も出来ます。
もちろん、自分も他の人が作ったステージを遊ぶ事が出来ますよ。
気になった点
終盤はやや違う方向性に・・・
これは賛否が分かれる点だと思いますが、終盤にかけて、ゲーム性がかなり変わってきます。
前半はパズルアクションがメインなので、頭を使う事が好きな人にはたまらないと思いますが、後半はほぼタワーディフェンスになり、アクション性が非常に強くなってきます。
タワーディフェンスと言っても頭は使うのですが、前半のパズル要素強めがこのまま続くと思っていた人は肩透かしを食らうかもしれません。
総評
正直言って、このゲームは「隠れた名作」の部類になると思います。
派手な広告(プロモーション)もやってませんし、ダウンロード専売ですので、店頭にゲームソフトもありません。
よほどアンテナを敏感に張っていない限りこのゲームを知るすべがないんですよ。
ただ、一度プレイすると病みつきになる中毒性があるゲームです。
難易度は低いので、かなり手軽に遊べるゲームです。
本当に面白いので、是非、プレイしてみてください!
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